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ボストンとMIT、そしてウォータータウンへ(2)


ボストンとMIT、そしてウォータータウンへ(1)の続き

ロック・バンド「ボストン」(Boston)のデビュー・アルバム「幻想飛行(原題:Boston)」の制作は、トム・シュルツ(Tom Scholtz)の完成度の高いデモ・テープの再現だったようです。
メンバーはオーディションで集められたようですが、リード・ボーカルのブラッド・デルプ(Bradley E. Delp、1951年 – 2007年、一酸化炭素中毒による自殺)以外は、実質的に演奏ツアーを目的としたものだったようです。
そして現在までに発表されたアルバムは、ベスト盤1枚を除き僅か5枚しかありません。活動を継続しているバンドとしては異例な寡作のグループと云えます。
自らが膨大な時間をかけてミックス作業まで行うシュルツの拘(こだわ)りが、その大きな要因と思われます。
その5枚の発表年次は次の通りです。

  • 1976年:幻想飛行(原題:Boston)
  • 1978年:ドント・ルック・バック(Don’t Look Back)
  • 1986年:サード・ステージ(Third Stage)
  • 1994年:ウォーク・オン(Walk On)
  • 2002年:コーポレイト・アメリカ(Corporate America)

例の「No Synthesizers Used」「No Computers Used」の表記については、「ウォーク・オン」以降は「No Computers Used」だけになっています。
2枚目以降は8年毎のリリースですが、リード・ボーカルのブラッド・デルプの死の影響だったかも知れませんが、現在10年以上の空白があります。新しいボーカルも決まりツアーは行なっています。
そんな2008年のライブ映像があります。1986年にビルボード誌の全米1位になった「Amanda」の映像です。

BOSTONAmanda @2008 LiVE
http://www.youtube.com/watch?v=CFRxqGOBGYM (YouTube)

そしてシュルツのギターも健在です。

BOSTONInstrumental @2008 LiVE
http://www.youtube.com/watch?v=uRBpHzrYj8k (YouTube)

そんな寡作なボストンですから、ベスト盤でなくそれぞれのアルバムを聴いてみるのも良いのではないでしょうか?
2006年にはアルバム「幻想飛行」と「ドント・ルック・バック」のデジタル・リマスターをシュルツ自身が手掛けています。
この際、シュルツの拘りを確かめるために、前の(1)で紹介したソニー・ロック名盤100選「レガシー・レコーディング・シリーズ」の「Blu-Spec CD2」や、ユニバーサルミュージックの「My Generation,My Music on SHM-CD」シリーズの、高音質CDで聴き比べるのも良いかも知れません。

ソニー・ロック名盤100選「レガシー・レコーディング・シリーズ」の「Blu-Spec CD2」

ドント・ルック・バック

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ユニバーサルミュージック「My Generation,My Music on SHM-CD」シリーズ

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ウォーク・オン

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しかし、この辺の嗜好はあくまでも個人の好みの問題だと思います。「Blu-spec」には通常のCDと聴き比べられる、2枚組オムニバス盤の「聴き比べ体感!Blu-spec CD2×CD Legacy Recordings編」がありますので試しては如何でしょうか?

聴き比べ体感! Blu-spec CD2×CD Legacy Recordings編

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私の個人的な感覚としては「Blu-spec」盤の方がややマイルドな感じの気がします。ただ言えるのは、マスター音源と再生環境による影響の方が当然大きいと云えます。
もっともボストン(シュルツ)の楽曲は通常のCDでも充分な品質であることは間違いありません。

一方、シュルツのエンジニアとしての足跡ですが、ギター・アンプやエフェクターの開発も有名な話です。
「Rockman(TM)」のブランドで知られるこのエフェクターは、初期のB’z(松本孝弘のギター)で使われてたようです(「THE中古楽器屋」のコラム)。
ギターとボーカル以外は小室哲哉風の打ち込みが多いようですが、シュルツの開発したエフェクターを通したギターの音も確かめて下さい。

B’zの歴史 【シングルメドレー編 1/2】 1988年~1999年
http://www.youtube.com/watch?v=_LFDpdoz0WA (YouTube)

B’zのベスト盤「B’z The Best XXV 1988-1998」が6月12日に発売予定です。

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シュルツが1980年に起こした音響機器製造会社「SR&D(シュルツ・リサーチ・アンド・デベロップメント)社」は、その開発品ロックマン・アンプ・シリーズで多くのアーティストの支持を得ますが、1995年にロックマン・シリーズをダンロップ社に売却、その後SR&D社も売却します。(ダンロップ社Rockmanシリーズ)
しかし、シュルツの発明は数多く、35件近くの特許を持っているようです。ただ、アナログ世代の彼は、未だに今では主流のMIDIスタイルのサンプリング楽器やPCを使った音楽には抵抗があるようです。

シュルツの持つ24トラックのアナログ・テープデッキ(3M社M79)とテープ在庫(スコッチ226)は健在のようなので、長い沈黙を破って、次のアルバムの発表が期待されます。
今年11年振りのNewアルバム発表が期待されるコメントがあります。

Many exciting things are moving forward as we head into spring 2013.

Tom is buried in the studio, lovingly coaxing his legacy analogue equipment to bear with him just a little longer while he wraps up the mix of his latest song, “Someday.” ……

出典:Official Boston Website -News-

シュルツの学んだMIT(マサチューセッツ工科大学)ですが、最初はボストン技術学校としてボストンのニューベリー通りに設立されました。1865年に現在の名称に変わり、20世紀初頭のボストンの地価高騰によりコプリー広場付近のキャンパスから現在の場所に移転しました。
まさしく「ボストン・マラソン爆発事件」の最初の現場付近にあった訳です。

シュルツの一人息子(最初の妻との子供)もMITで機械工学を修めていますが、ミュージシャンの道には進まなかったようです。
今でもトム・シュルツはボストン・エリアを活動拠点とする音楽家兼技術者兼慈善家と言えるでしょう。

Boston_BackBay

写真は、MITに向かうチャールズ川に架かるハーバード橋(Harvard Bridge)から見たボストンの眺めです。左側のボストンで(ニュー・イングランド地域でも)一番高いビル「ジョン・ハンコック・タワー(John Hancock Tower)」の所がコプリー広場です。

 

 

ボストンとMIT、そしてウォータータウンへ(1)


そのニュースは5月16日の早朝(日本時間)、ボストンからのEメールで知らされました。
「ボストンで爆弾テロ!」、改めて朝のニュースで確かめてその事実に驚きました。
アメリカの中でも治安の良い街として知られるボストン。しかも、世界最古(1897年が最初)の歴史を誇るマラソン大会中に起きたできごとでした。

そのボストン・マラソンはアメリカの独立戦争の開戦を記念して、「愛国者の日(Patriots’ Day)」の4月第3月曜日に、毎年開催されています。
今年の第117回大会もボストン郊外のホプキントンをスタート地点として、街の中心地のコプリー広場(Copley Square)に至る、42.195kmの片道コースで行われました。
その最中、多くの人達で賑わうフィニッシュ地点手前で1回目の爆発があり、続けてその約100m手前で2回目がありました。

Boylston_St

ボイルストン通り

以前の記事(月9とボストン)で紹介したボイルストン通りにおける惨事でした。丁度、その2箇所が写った写真があります。

写真は普段のボイルストン通りです。
時計台の塔がある建物(Old South Church)の手前がマラソンのゴールです。この付近が最初の爆破地点です。そして、正面の信号の先が2度目の爆破地点です。
事件現場付近の地図はこちらです。

この爆発で3人が亡くなり、300人近い人々が負傷するという事件に発展しました。

MIT

ボストン側から見たMITの様子

その後の経過としては、3日後の18日(現地時間)に容疑者2人の写真公開の後、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology、通称MIT)付近で銃撃戦があり、大学の警備警官が犯人に射殺されています。
MITはボストンの中心地からチャールズ川(Charles River)を隔てた対岸にあります。同じケンブリッジ市にあるハーバード大学と並んで、全米有数の名門大学です。

そして翌19日、チャールズ川の上流に位置する近郊のウォータータウン(Watertown)における銃撃戦で犯人1人が死亡、その後もう1人の捜索と逮捕で結末を迎えます。
結局、犯人はチェチェン共和国出身の移民(チェチェン難民)の若い兄弟だった訳です。

この事件はイスラム教との関係もあり、2001年の9.11の同時多発テロ事件を思い起こした人も多かったと思います。確かに9.11における飛行機はボストンのローガン国際空港を飛び立った便でした。
世界からの留学生を含む多くの学生が暮らすボストンです。この街が、こういった事件の舞台となる一つの理由かも知れません。

本来であれば、一斉に花々が咲き出し、ボストンの春を告げるイベントであった筈のボストン・マラソンです。
改めて、元の平和で暮らし易いボストンに戻ることを祈ると共に、犠牲者並びにその家族に哀悼の意を表します。

さて、この時期になると事件現場の直ぐ先にあるボストン・パブリック・ガーデン(Boston Public Garden)にはアリウム・ギガンジウムの花が一杯に咲き誇り、リスや水鳥が戯れ、池にはスワン・ボートが周遊します。

GiganteumSwan_boat

そのボストンにおける平和な時間を綴ったYuki Kanesaka(monolog)の楽曲があります。

Yuki KanesakaPeaceful Family
http://www.youtube.com/watch?v=Hen6tdRLmLs (YouTube)

彼のスタジオ(Komugiko Studio)は爆発現場の至近距離であり、爆発の音はレコーディング作業中のその場所にも響いたそうです。
その後の混乱や事件の恐怖体験も収まり、現在日本で演奏ツアー中です。
GW中の「monolog “JAM” Festival」は多くの参加者を得て、各会場共に「音楽によるコミュニケーション」が図れたとのことです。別の機会にその様子を紹介できればと思います。

ところで、先の爆発事件に関わる場所「ボストンとMIT、そしてウォータータウン」ですが、ある人物に縁(ゆかり)のある地名として記憶に残っていました。
トム・シュルツ(Tom Scholtz、1947年 -、オハイオ州出身)その人です。
ロック・グループ「ボストン(Boston)」のリーダーと言うより、シュルツのソロ・プロジェクト「ボストン」と言った方が良いかも知れません。
デビュー曲であり代表曲の「ボストン|宇宙の彼方に(原題:More Than A Feeling)」があります。日産のエルグランドのCMでも使われた事があるので聴き覚えがあると思います。

エルグランドCM NIGHT FLIGHT (夜間飛行) 篇
http://www.youtube.com/watch?v=tKOyQ7ZUekA (YouTube)

この演奏はカバー・バージョンのようですが、オリジナル・バージョンはこちらです。

BostonMore Than A Feeling
http://www.youtube.com/watch?v=EaqC6McHjio (YouTube)

そのボストンの最初のアルバムは1976年にリリースされた「幻想飛行(原題:Boston)」ですが、基本的にシュルツが一人で創り上げた多重録音によるデモ・テープの音源が始まりでした。
「No Synthesizers Used(シンセサイザーを使用せず)」「No Computers Used(コンピューターを使用せず)」と云う有名なクレジットが、そのアルバムには記(しる)されています。
前にも紹介したソニー・ロック名盤100選から「レガシー・レコーディング・シリーズ」の「Blu-spec CD2」で発売されています。

幻想飛行

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シュルツがコツコツと多重録音によるデモ・テープ作りに励んだのは、MITで機械工学(修士)を学んで、シニア・プロダクト・エンジニアとしてポラロイド社(Polaroid Corporation、2008年経営破綻)に勤務していた頃です。
その場所は、ボストン郊外のウォータータウンの自宅アパートに構築したスタジオでした。
今で云う「宅録」の先駆者だと思います。但し、今のデジタル一辺倒ではない、究極のアナログによるシステムだったと思います。

ボストンとMIT、そしてウォータータウンへ(2)へ続く