ギタリスト・シリーズ(6)
今ではアコースティック・ギターによるフュージョン(スムース・ジャズ)もポピュラーなものとなり、ポール・ブラウンとのアルバム共演でおなじみのマーク・アントワン(Marc Antoine)やピーター・ホワイト(Peter White)をはじめ多くのギタリストが活躍しています。
今回紹介するギタリストは、その先駆けとも言える「アール・クルー(Earl Klugh)」です。
アール・クルーを初めて聴いたのは学生の頃と今から40年近く前の事ですが、お店の名前は忘れましたが、当時、渋谷センター街にあった音楽喫茶でした。
当ブログでも新宿や中央線のジャズ喫茶が紹介されましたが、この店はジャズ、ソウル、ロックなどジャンルを問わず流行りの曲や話題の曲を聴くことが出来ました。今のようにインターネットで簡単に情報が入手出来ない時代、私にとっては貴重な音楽の情報源として結構通った思い出があります。
いつものように店に行き曲を聴いていたのですが、そこで流れはじめたのがアール・クルーのセカンド・アルバム「リヴィング・インサイド・ユア・ラヴ(Living Inside Your Love)」(’76)でした。
まだレコードの時代でA面を通しで聴く事が出来たのですが、アルバム1曲目の「キャプテン・カリブ(Captain Caribe)」から驚きでした。
アール・クルー(Eral Klugh) | キャプテン・カリブ(Captain Caribe)
http://www.youtube.com/watch?v=vJIWEbFWy08 (YouTube)
フュージョンがまだクロスオーバーと呼ばれていた時代、私も「ジョージ・ベンソン」の「ブリージン」(’76)、日本では「高中正義」の「SEYCHELLES」(’76)といったギタリストからこのジャンルを聴き始めたのですが、どれもエレクトリック・ギターによるサウンドでした。
この曲もエレクトリックピアノによるイントロは如何にもクロスオーバーといった感じですが、メロディーをアコースティック・ギター、それもクラシック・ギター(ガット・ギター)と呼ばれるナイロン弦によるサウンドは画期的なものでした。
ナイロン弦といえばクラシックという印象が強いのですが、私はボサノヴァでの印象が強く、ラテン・サウンドにはピッタリな音色だなと思ってました。
その印象とラテンを取り入れたアール・クルーのサウンドが上手く重なったのかもしれませんが虜となってしまい、今でも私の定番として欠かせないギタリストであります。
アール・クルーは1953年米国デトロイト生まれです。10歳からギターを始め「チェット・アトキンス」に心酔し、その奏法を研究するうちに独自ともいえるアコースティック・ギターによる奏法を確立したと言われています。
プロとしてのデビューは最初はジャズ・バンドのギタリストとしてジャズ・クラブでの活動でしたが、この頃にジョージ・ベンソンと出会い、1971年のアルバム「ボディー・トーク」への参加やツアーバンドのセカンド・ギタリストとして活動を開始します。
その後、チック・コリアのリターン・トゥ・フォーエヴァーに「ビル・コナーズ」の後任として参加しますが、家庭の事情により、わずか2ヶ月と短期間で「アル・ディ・メオラ」にその座を渡してしまいます。
何れもエレクトリック・ギターでの参加でしたが、この転機がなく続いていたのであれば、アコースティック・ギター・プレイヤーとしての成功は無かったのではとも言われ、やがて1976年にソロとしてアルバム・デビューとなり大成功となります。
このようにアール・クルーの成功により、エレクトリック・ギターがメインのギタリストもアコースティック・ギターによるアルバムをリリースしたり、冒頭で書いたように多くのギタリストも登場するなど、アコースティック・ギターによるフュージョンがポピュラーなものとなり親しまれていますが、やはりその先駆けとなったのがアール・クルーではないかと思います。
アルバムについてですが、1976年のファースト・アルバムから2013年まで30枚以上と一時期は毎年のようにリリースしています。
ソロ・アルバム以外にも「ボブ・ジェームス」、「ジョージ・ベンソン」とのコラボレーション・アルバムや映画のサウンド・トラックもリリースし、そちらで聴かれた方も多いかと思います。
私は初期のアルバムはレコードでの所有が殆どで、何枚かはCD復刻とともに購入しましたが、既に廃盤となり買い逃したアルバムもあり復刻を望んでいました。
中古盤も探しましたがプレミア価格と諦めていたところ、2010年より輸入盤となりますが初期のアルバムを中心に3in1*でリリースとなりました。
ダブってしまうアルバムもありますがリマスターされており、なにより価格が安いのが魅力で、私のように買い逃した方にはお勧めです。
アルバムのリリース順とともに私のお気に入り曲を紹介します。
Earl Klugh/Living Inside Your Love/Magic In Your Eyes
2010年にリリースされたこのセットにはこの3枚が収録されています。
- Earl Klugh (1976)
- Living Inside Your Love (1976)
- Magic in Your Eyes (1978)
ファースト・アルバム「アール・クルー(Earl Klugh)」より、「ニール・セダカ」のヒット曲「 雨に微笑みを(Laughter In The Rain)」のカバーを紹介します。
アール・クルー(Eral Klugh) | 雨に微笑みを(Laughter In The Rain)
http://www.youtube.com/watch?v=xteq35K6SsE (YouTube)
Dream Come True/Crazy for You/Low Ride
2011年にリリースされたこのセットにはこの3枚が収録されています。
- Dream Come True (1980)
- Crazy for You (1981)
- Low Ride (1983)
アルバム「ドリーム・カム・トゥルー(Dream Come True)」より「ドック(Doc)」を紹介します。
この曲は日本テレビ系列で放送された朝のワイドショー「ルックルックこんにちは」のテーマ曲として使用され、聴かれた方も多いのではと思います。
アール・クルー(Eral Klugh) | ドック(Doc)
https://www.youtube.com/watch?v=Jmdj7zdVHJ8 (YouTube)
Finger Paintings/Heart String/Wishful Thinking
2012年にリリースされたこのセットにはこの3枚が収録されています。
- Finger Paintings (1977)
- Heart String (1979)
- Wishful Thinking (1984)
アルバム「Finger Paintings」より「ドクター・マクンバ(Dr. Macumba)」を紹介します。
私はBLUE NOTEより「デイヴ・グルーシン」のプロデュースによりリリースされたファースト・アルバム、初めて聴いたセカンド・アルバム、そしてこのサード・アルバムが思い出も深く大好きです。
アール・クルー(Eral Klugh) | ドクター・マクンバ(Dr. Macumba)
https://www.youtube.com/watch?v=xi73VOh-EXY (YouTube)
Late Night Guitar/Two of a Kind (With Bob James)/Nightsongs
2013年にリリースされたこのセットにはこの3枚が収録されています。
- Late Night Guitar (1980)
- Two of a Kind (with Bob James) (1982)
- Nightsongs (1985)
アルバム「Late Night Guitar」より「プラターズ」のヒット曲「煙が目にしみる(Smoke Gets In Your Eyes)」のカバーを紹介します。
このアルバムを最初に聴いた時は今までのサウンドと違い驚きましたが、アルバムのタイトルのとおり「Late Night(深夜)」に聴くのに良いかと思います。
アール・クルー(Eral Klugh) | 煙が目にしみる(Smoke Gets In Your Eyes)
https://www.youtube.com/watch?v=7-u69MVoQKw (YouTube)
他にも紹介したいアルバムもありますが、この4組のセットはアール・クルーを聴くのにはお勧めかと思います。
他にもCDで聴きたいアルバムがあり、私もですが、今年2014年もこの3in1のシリーズがリリースされるのを期待するファンも多いのではと思います。
*編集部注:3in1とは、オリジナルアルバムを3タイトルを1セットにして、期間限定生産される3枚組CDのこと。2枚組CDの場合は2in1と呼ばれる。