「ダイアン・シューア(Diane Schuur)」と「B. B. キング(B. B. King)」のジャンルの異なる大物2人が1994年にリリースしたデュエット・アルバム「ハート・トゥ・ハート(Heart To Heart)」を紹介します。
ジャズ・シンガーでピアニストの「ダイアン・シューア」は1953年12月10日、アメリカのワシントン州で生まれました。
未熟児網膜症という病気により失明というハンディを背負っての誕生でしたが、2歳半より歌い始め、10歳には地元のホテルで歌を披露しています。
両親のレコードコレクションなど音楽に接する機会も多く、盲目というハンディはありましたが絶対音感の持主で、ピアノも独学で学んだそうです。
3オクターブ以上の声域持ち、ジャズの道へと進んだダイアンですが、1979年のモンタレー・ジャズ・フェスティバルの出演がスタン・ゲッツに認められ、1984年にGRPレコードからアルバムデビューとなります。
その後1987年に「タイムレス(’86)」でグラミー賞(ベスト・ジャズ・·ヴォーカル・パフォーマンス賞、女性部門)を受賞。さらに翌1988年も「ダイアン・シューア&ザ・カウント・ベイシー・オーケストラ(’87)」にて2年連続グラミー賞(同賞)を受賞し、トップ・ジャズ・シンガーとしての地位を獲得します。
 |
Timeless
新品価格
¥3,347から
(2013/11/29 01:51時点)
|

|

|
「ダイアン·シューア」を初めて聴いたのは「GRP All-Stars Live From The Record Plant)」という、1985年にロサンゼルスのレコード・プラント・スタジオで収録されたライブ映像でした。
GRP(Grusin/Rosen Productions)はフュージョン全盛時にデイヴ・グルーシンとラリー・ローゼンによって設立された原盤供給プロダクションですが、のちにレーベルとGRPレコードとなり多くのアルバムをリリースしています。ジョージ・ベンソンやチック・コリアなど当時フュージョンの第一線で活躍したアーティストが所属していました。私が紹介しました横倉裕もGRPです。
GRP All-Starsとありますが、メインはデイブ・グルーシンとリー・リトナーの2人に、第一線で活躍のセッション・ミュージシャンの参加によるライブです。そこに、ゲストとして参加していたのがGRP所属のダイアン・シューアで、「アメイジング・グレース」など3曲を披露し、その歌声の良さに驚きました。
バックが私の大好きなミュージシャン達というのも良さを引き立てていたのかもしれませんが、今でも見る機会の多い映像です。
そしてもう1人は私が詳しく紹介する必要もないキング・オブ・ザ・ブルース、ミスター・ブルースマンなどと称され誰もが知るスーパースター「B. B. キング」です。
B.B. キングは1925年9月16日にミシシッピ州インディアノーラ近くのイッタ・ベナ生まれです(1943年にインディアノーラに移る)。
ミシシッピ・デルタと呼ばれるこの地域は多くの世界的なミュージシャンを生み出し、ブルース生誕の地とされています。
前に紹介した「ライ・クーダ」と映画「クロスロード」に登場するヤズーシティーもここから南下した位置にあり、この地域とブルースの関わりがお判りかと思います。
B.B. キングは父の失踪や母の死などで幼少の頃から働くなど生活は貧しかったようです。しかし、教会でゴスペルを歌い、地元のラジオから流れる音楽を聴いてブルースに親しむようになります。初めてギターを手にしたのも教会で12才の頃だそうです。
やがてメンフィスへ移り最初は地元ラジオ局のDJとなり、その時の愛称が「Beal Street Blues Boy」で、これがのちに「B.B.」となります。
本格的にブルース・ギタリストとしての活動もメンフィスからで、やがてレコードデビューとなり、1951年リリースの「3 O’clock Blues」がR&Bチャートの1位になりました。以降も数多くのヒットを世に送り出し、キング・オブ・ザ・ブルースとしての活躍は皆さんご存知の事と思います。
私はあまりブルースを聴くほうではないのですが、B.B. キングは幅広いジャンルのアーティストとのデュエット(アルバムも)多く、この2枚のアルバムは購入しよく聴きました。
エリック・クラプトンはロックでありブルースではありますが。
さて前置きが長くなりましたが、ジャズとブルースの大物2人によるこのアルバム「ハート・トゥ・ハート」を紹介します。
この2人は1991年に開催された「斑尾ジャズ・フェスティバル」でお互い別のアクトとしての出演でしたがジャムセッションで共演しています。それが縁で制作されたのかは定かではありませんが、「ハート・トゥ・ハート」は1994年リリース作品です。
以前から気にはなっていましたがようやく入手し聴きました。内容はお互いのジャンルを取り入れた、ポップス、ソウル、カントリーなどのをカバー曲を、お洒落なアレンジで仕上がっています。
また2人の歌唱力の良さはもちろんですが、ギター好きの私にとってはB.B. キングの愛器「ルシール」で奏でるギターも魅力です。音色、フレーズはやはりB.B. キングなのですが、控えめで弾きまくる事もなく、曲調、コード進行が違うソロも心地よいです。
ハート・トゥ・ハートの曲目リスト
- No One Ever Tells You (ノー・ワン・エヴァー・テルズ・ユー)
- I Can’t Stop Loving You (愛さずにはいられない)
- You Don’t Know Me (ユー・ドント・ノウ・ミー)
- It Had To Be You (イット・ハド・トゥ・ビー・ユー)
- I’m Putting All My Eggs In One Basket (アイム・プッティング・オール・マイ・エッグス・イン・ワン・バスケット)
- Glory Of Love (グローリー・オブ・ラヴ)
- Try A Little Tenderness (トライ・ア・リトル・テンダネス)
- Spirit In The Dark (スピリット・イン・ザ・ダーク)
- Freedom (フリーダム)
- At Last (アット・ラスト)
- They Can’t Take That Away From Me (ゼイ・キャント・テイク・ザット・アウェイ・フロム・ミー) <Bonus Track アメリカ盤未収録>
アルバムのプロデュースは「ゲッツ/ジルベルト」でグラミー賞の最優秀エンジニアリング賞獲得で知られる「フィル・ラモーン」です。
フィル・ラモーンは多くのアルバムを手掛けていますが、私はフランク・シナトラの「デュエット」がお気に入りで、中でもグロリア・エスティファンとのデュエット曲「カム・レイン・オア・カム・シャイン」は今でもよく聴いています。
アルバムより4曲紹介します。
1曲目「I Can’t Stop Loving You(邦題名(愛さずにはいられない)」は元々はカントリー・シンガー作による曲ですが、レイ・チャールズのヒットでおなじみの曲です。
B.B king and Diane Schuur | I Can’t Stop Loving You
http://www.youtube.com/watch?v=nBFXMvuvBX4 (YouTube)
2曲目の「You Don’t Know Me」もカントリー畑の曲ですが、この曲もレイ・チャールズが取り上げヒットしています。
B.B king and Diane Schuur | You Don’t Know Me
http://www.youtube.com/watch?v=oGV2pJWBlkE (YouTube)
3曲目の「Try a Little Tenderness」はアレサ・フランクリンやオーティス・レディングが取り上げヒットしています。
B.B. King & Diane Schuur | Try a Little Tenderness
http://www.youtube.com/watch?v=ZFXuEJBNJbU (YouTube)
4曲目の「At Last」は映画「銀嶺のセレナーデ」のテーマ曲で、グレン・ミラー楽団でヒットし、ランディ・クロフォードなど多くのアーティストがカバーしています。
B.B. King & Diane Schuur | At Last
http://www.youtube.com/watch?v=jVcwapLDf68 (YouTube)
リリースからかなり経っての購入でしたが、聴く機会も多い今一番のお気に入りアルバムです。