たけしとジャズ、60年代の新宿


村上春樹の3年振りの長編小説、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」が話題になっています(NHK NEWSweb)。
発売日の12日までタイトル以外一切の情報が明かされていなかったこの本ですが、既に最初の50万部は即完売し、発売1週間で累計100万部に達したそうです。
通販サイトにおける購入ページでも、発売日までは内容の紹介もされず、表紙の画像すらありませんでした。漸く画像も公開になったこのページには、一気に多くのレビューが寄せられていますが、その評価は大きく分かれているようです。購入実績が無いと書けない筈のレビューですから、それだけ多くの人が既に入手した証でもあります。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

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春樹小説に欠かせないのが、重要なファクターとして登場する音楽です。
以前に私のシタールとノルウェイ森で紹介した「ノルウェイの森」は曲名がそのままタイトルとなっていますが、今回はタイトルの一部に隠されていました。
予め「巡礼の年」がリスト(Liszt Ferenc)のピアノ曲集を意味すると予測したタワー・レコードでは、そのCDを揃えていたようですが焼け石に水だったようです(Yahoo!ニュース)。
その演奏者がラザール・ベルマン(Lazar Berman、1930年 – 2005年、旧ソ連出身のロシア人ピアニスト)である事までは特定できず、発売元のユニバーサル・ミュージックでは急遽5月15日にラザール・ベルマンの演奏する「巡礼の年(全3枚組)」を再発売するそうです。

リスト巡礼の年、第1年:スイス、1.ウィリアム・テルの聖堂(演奏:ラザール・ベルマン)
http://www.youtube.com/watch?v=jVGdPx2m8yw&list=PLswpfKxK1W7_Et023FLg7eOi7GzwwTptW&index=1 (YouTube)

 





Lazar Berman/Liszt: Annes de Pelerinage [4714472]





Lazar Berman/リスト:≪巡礼の年≫全曲 [UCCG-4818]

作家として独立するまではジャズ喫茶を経営していた村上春樹ですが、一時期新宿のジャズ喫茶に入り浸っていたようです。

「ほとんど学校にも行かずに、新宿でオールナイトのアルバイトをして、そのあいまに歌舞伎町のジャズ喫茶に入りびたっていた」

出典:エッセイ集、『村上朝日堂』

村上朝日堂 (新潮文庫)

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村上春樹が、小説「ノルウェイの森」に登場した目白の学生寮を出て、西武新宿線沿線に住んでいた1968年から69年頃のことのようです。
そんな学生運動が盛んだった時代、当時の新宿のジャズ喫茶に入り浸り、そしてジャズ喫茶のボーイもしていた若者がいました。ビートたけし(本名:北野武、1947年 -、東京都足立区出身)です。

たけしとジャズ—それは、たけしと新宿の物語としても語られる。いまから40年以上も前のこと。1967年(昭和42年)、20歳の北野武は明治大学工学部(後の理工学部)機械工学科に在籍する、都会の賑やかさ、楽しさどころか、喫茶店すら知らない「あまりにも無知な、東京の田舎者だった」と、言う。
・・・・・
「最初はびっくりしたの。ジャズ喫茶にたむろする連中ってのはさ、サルトルがどうの、カフカがどうのって難しい話をして、理数系の俺には、なんかこれが教養っていうもんかぁ、文系の人は違うなぁって。
・・・・・

出典:『たけしとジャズ』ライナー(新村千穂、筆)

たけしがジャズ喫茶に入り浸るきっかけは、たまたま目にした喫茶店から聞こえてきた、勢いを持ったトランペットの音で、それがたけしと新宿、そしてジャズ喫茶の始まりとのことです。そして名曲喫茶「風月堂」やジャズ喫茶「新宿ACB(アシベ)」に入り浸り、そして「びざーる」や「ビレッジ・バンガード」でアルバイトをしていました。
名曲喫茶「風月堂」の常連には多くの作家、詩人、画家なども多くいたようで、その「卵」たちも集まっていました。名前の挙がっているのは、五木寛之、寺山修司、小田島雄志、岡本太郎などです。

一方のジャズ喫茶では、作家の中上健次が根城にした「ジャズビレ」などにはマイノリティが多かったようです。たけしがボーイをしていた「ビレッジ・バンガード」の同僚には、「警察庁広域重要指定108号」の殺人事件を起こした永山則夫もいたそうです。
そんなジャズ喫茶で流れていたのはジャズ、モダン・ジャズとフリー・ジャズであったといいます。
ビートたけしが監修したコンピレーション・アルバム「たけしとジャズ」があります。

たけしとジャズ

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たけしは次の様に語ります。

「小難しい話をしたり、通ぶった曲をリクエストをしていたあなた達! 本当は、ここにあるスタンダードな名曲こそ、聞きたかったんだろ。俺は、知ってんだ。ざまぁみやがれ、って感じだな」

出典:『たけしとジャズ』ライナー(新村千穂、筆)

その2枚組アルバムの1曲目は「ジョン・コルトレーン|マイ・フェイヴァリット・シングス」です。

John ColtraneMy Favorite Things
http://www.youtube.com/watch?v=KNmpIA_bLcE&playnext=1&list=PLPlhX_1Bcab1EYCE4mQjOXJIui8g98UOb (YouTube)

マイ・フェイヴァリット・シングス( 2)

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たけしがタクシーの運転手をしていた時にサインを貰ったという、セロニアス・モンクの「セロニアス・モンク|モンクス・ドリーム」も当然 含まれています。
Thelonious MonkMonk’s Dream
http://www.youtube.com/watch?v=eIcwq3G-jOc (YouTube)

モンクス・ドリーム 4

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HiroさんのタモリのJazz観で紹介のあったタモリは、1965年に早稲田大学第二文学部に入学し、モダン・ジャズ研究会(通称:ダンモ研)に在籍しており、新宿はホームグランドだったと思います。
しかし、村上春樹が1968年に第一文学部入学した年には既に福岡に帰郷しています。

そんなタモリの選ぶジャズのアルバム「タモリとジャズ」も聴いてみたい気がします。何しろ、評論家の植草甚一(故人)が所有していた4,000枚のジャズ・レコード・コレクションを引き取ったその人ですから。「いいとも!」と云って引き取ったか否かは定かでありません。

新宿やジャズ喫茶に殆ど縁の無かった私が、ライブのある新宿のジャズ喫茶に足を踏み入れたのは70年代になってからの事です。
「タモリ伝説」の登場人物である、山下洋輔のトリオを「新宿ピットイン(PIT INN)」昼の部で観たのが、最初だと思います。サックスが中村誠一から坂田明に代わっていました。
大音響で繰り広げられる3人のバトルが今でも印象に残っています。

山下洋輔トリオ|キアズマ CHIASMA
https://www.youtube.com/watch?v=AJxaB5BKwKs (YouTube)

キアズマ

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なお、この記事の執筆にあたり雑誌「JAZZ JAPAN」(ヤマハミュージックメディアより不定期発行)を参考にしました。2010年に休刊となった「スイングジャーナル(Swing Journal)」に代わる貴重な雑誌だと思います。

 

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