日別アーカイブ: 2013年3月25日

花の季節に


3月後半となり、このところの暖かさで桜前線の北上のスピードは予想より早まりました。
当初東京の開花は3月25日ごろと言われていましたが、そろそろ満開の声が聞こえてきます。
都内のさくらの名所ではお店を出す業者のみなさんがあわてて出店の準備をしています。

「桜」「花」「春」にまつわる歌を紹介します。

先にこのブログで紹介しました、「ブルー・ミッチェル(Blue Mitchell), trumpet」が、「ホレス・シルヴァー(Horace Silver), piano」の「ホレス・シルヴァ―・クインテット(HORACE SILVER QUINTET)」に参加していた時代、1962年に来日しました。
この帰国後、彼らは「The Tokyo Blues」をリリースしました。その中に「Cherry Blossom (Ronnell Bright)」という曲が収められています。

ホレス・シルヴァー(Horace SILVER) | Cherry blossom (1962)
http://www.youtube.com/watch?v=nvoIC-0XK-M (YouTube)

Tokyo Blues

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この曲から、日本ののどかな春の心地よさが、ピアノの旋律から伝わってきます。

1963年~1970年ごろまで、イタリアの「カンツォーネ・ポップス」が流行りました。
「ボビー・ソロ(Bobby Solo)」「ジリオラ・チンクェッティ(Gigliola Cinquetti)」とともによく覚えている歌手が「ウィルマ・ゴイック(Wilma Goich)」です。

花のささやき(In Un Fiore)」は、恋する女性が「その愛を好きな男性にわかってもらえないはがゆさを、花からの愛のささやきとして、早く気付いて欲しい」と歌っているのです。
桜の花に重ねてみますと、「開花」から、あっという間に花吹雪となって散っていく「はかなさ」、そしてウィルマ・ゴイックの歌声とで、本当に切ない気持ちになります。
まさに今のこの春爛漫の華やかな季節の中、花開いた一瞬を好きな人に見てもらいたいという「花のささやき」を感じますね。

ウィルマ・ゴイック(Wilma Goich)| 花のささやき(In Un Fiore)
http://www.youtube.com/watch?v=JIrwfQO61k0 (YouTube)

カンツォーネ~イタリアン・ポップス・ベスト・セレクション

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この曲は1966年の「サンレモ音楽祭(イタリア語:Festival della canzone italiana)」の入賞曲です。

春の如く(It Might As Well Be Spring)」は、1945年のミュージカル映画「ステート・フェア(State Fair)」の主題歌です。

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オスカー・ハマースタイン2世(Oscar Hammerstein II)リチャード・ロジャース(Richard Rodgers)の二人がこの映画のために曲を書きおろしています。
「ロジャース&ハマースタイン」として知られるこのコンビは、「王様と私」「南太平洋」「サウンド・オブ・ミュージック」など多くのミュージカルを手掛けています。

サラ・ヴォーン(Sarah Vaughan) ft マイルスデイビス(Miles Davis) on Trumpet|It Might As Well Be Spring
http://www.youtube.com/watch?v=g1VEifmf9Uw (YouTube)

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クロッカスの花も、バラの蕾も、コマドリの翼も見たことがない・・・、
憂鬱なのに・・・
けれども、また、陽気な気分・・・
それはまるで春のよう・・・

春の予感を感じて心騒ぐ気分を表現しています。

「サヨナラ」ダケガ人生ダ


唐の詩人、于武陵(う ぶりょう、810年 – ?)の作品に、唐詩選に収められた『勧酒(かんしゅ)』と題する五言絶句があります。

  『勸酒』   酒(さけ)を勧(すす)む
勸君金屈巵  君(きみ)に勧(すす)む 金屈卮(きんくつし)
滿酌不須辭  満酌(まんしゃく) 辞(じ)するを須(もち)いず
花發多風雨  花(はな)発(ひら)いて 風雨(ふうう)多(おお)し
人生足別離  人生(じんせい) 別離(べつり)足(た)る

出典:WEB漢文大系

この漢詩を小説家の井伏鱒二(いぶせますじ、1898年 – 1993年)は次のように訳しました。

コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ

出典:井伏鱒二『厄除け詩集』

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桜の開花予想も早まり、例年より大分早い桜の訪れになるようです。卒業や転勤の多いこの頃、何故かこの言葉が気になります。
「サヨナラ」ダケガ人生ダ...

前にも書いた1969の頃に、「時には母のない子のように」でデビューしたカルメン・マキ(本名は非公表、1951年 -)の歌った曲に、「さよならだけが人生ならば」もありました。

カルメン・マキさよならだけが人生ならば
http://www.youtube.com/watch?v=gbHq2Yg2ZMc (YouTube)

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この曲の作詞も「時には母のない子のように」と同じく、演劇実験室「天井桟敷」を主宰し、メディアの寵児的存在であった寺山修司(1935年 – 1983年)でした。
詩人や劇作家としてだけではなくマルチなタレントぶりで、「僕の職業は寺山修司」と言っていたそうです。競馬にも造詣が深く馬主でもありました。

その寺山修司の主催する「天井桟敷」の舞台を見て、感銘し入団したのがカルメン・マキ(当時の通称は伊藤牧)です。
初舞台となった「天井桟敷」の公演『書を捨てよ、街へ出よう』がきっかけで歌手デビューします。寺山修司監修アーティスト「カルメン・マキ(17歳)」の誕生です。

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デビュー・アルバムとなった「カルメン・マキ|真夜中詩集 - ろうそくの消えるまで -」に「さよならだけが人生ならば」は入っています。
井伏鱒二の訳詞にある言葉に触発されて生まれたと思われる、寺山修司作詞のこの曲を、その歌詞と合わせて味わってみて下さい。
そして、そのアンサーソングとも云われる曲、「だいせんじがけだらなよさ」と続けて聴くと、より印象的です。同じアルバムの収録曲です。

カルメン・マキだいせんじがけだらなよさ
http://www.youtube.com/watch?v=6Ja5P0I_GY8 (YouTube)

彼女は「時に母のない子のように」のヒットのご褒美で貰ったレコードプレーヤーで聴いたジャニス・ジョプリン(以前の記事)の影響を受け1970年にロックに転向します。
その後、出産や育児による一時的な休止期間がありましたが音楽活動を続けています。
最近ではジャズ・ミュージシャンとの活動も多く、昨年の横濱ジャズプロムナードでは、ジャズの街「横浜」でHiroさん紹介のドルフィーに出演していました。
首都圏だけでなく関西方面のツアーもあるようです。

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井伏鱒二の弟子であった太宰治(だざいおさむ、本名:津島修治、1909年 – 1948年)は、未完の遺作となった『グッド・バイ』における「作者の言葉」で次のように綴っています。

唐詩選の五言絶句の中に、人生足別離の一句があり、私の或る先輩はこれを「サヨナラ」ダケガ人生ダ、と訳した。まことに、相逢った時のよろこびは、つかのまに消えるものだけれども、別離の傷心は深く、私たちは常に惜別の情の中に生きているといっても過言ではあるまい。

出典:太宰治『グッド・バイ』

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この太宰の小説の題名と同じタイトルのアルバム「グッド・バイ」でデビューしたのが、今で云うシンガーソングライターの森田童子(もりたどうじ、本名不詳、1952年 -)でした。
学園闘争が未だ盛んだった1969の頃に高校生活(中退)を送り、友人の死をきっかけに歌い始めたそうです。
シングルとしてデビュー曲となった「さよなら ぼくの ともだち」が、最後に収まっています。1975年のリリースです。

森田童子さよなら ぼくの ともだち
http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=g3W-B-LYQI8 (YouTube)

当時のフォーク系のシンガーに多かったように、彼女もメディアへの露出は殆どありませんでした。独特のカーリーヘアとサングラス姿だけが印象に残っています。
そんな彼女の作品を広く世間に紹介することになったのは、1993年にTBS系列で放送されたテレビドラマ「高校教師」でした。

脚本家の野島伸司(のじましんじ、1963年 -)が高校生の時に、たまたま行ったライブハウスで歌う彼女を知り、強く印象にあったようです。そのドラマの主題歌が「ぼくたちの失敗」です。

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森田童子ぼくたちの失敗
http://www.youtube.com/watch?v=KF77sQz1hIQ (YouTube)

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「ぼくたちの失敗~森田童子/ベストコレクション~」には何れの曲も含まれています。
このアルバムのギターは、アコースティックでは草分けの石川鷹彦(いしかわたかひこ、1943年)が担当しています。
「六文銭」の初期メンバーで、カルメン・マキと同じ「さよならだけが人生ならば」を出した1968年は未だ所属していました。

混沌とした1969の頃に卒業や別れを経験し、何の抵抗感もなく浪人生活に入った者にとって、それも「ぼくたちの失敗」のひとつだったかも知れません。

我が家の庭先の早咲きの桜は既に満開です。Sakura01